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作品.No.2420  ヘルマン・ヘッセ:「知と愛 ー ナルチスとゴルトムント ー」

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再読。意外と読み易く、美しい作品だった。

マリアブロンの修道院、一本の栗の木、

一生を捧げる為に預けられた美少年・ゴルトムント、

知性の使徒ナルチスは、
少年の美しさを愛するが故、友情を求め、また耽溺の危惧感から、距離を取り、
ゴルトムントの魂に宿る本性を見抜き、それを宣告する。

ジプシー女リーゼ、愛欲の本能に目覚め、修道院から出奔、流浪の遍歴が始まる。

放浪の旅の困窮・飢餓・凍え、それに勝る快楽・官能の甘美な喜び、

女と愛は、言葉を必要とせず、
男女が互いに求め合っている時は、その微妙に発散しあう物で察し合う、
隠語のように妙な、目でものを言い、かすれ声の、ある種の響き、それから匂いで、
愛の技巧の天分に恵まれたゴルトムントは早くも、
女を誘惑し夢中にさせる技を体得していた、

騎士の娘リディアと妹ユーリエ、叶わぬ恋愛の切ない悩ましさ・自己陶酔感、

年季の入った遍歴学生・ヴィクトルとの出会いと已む無き殺害、

ある修道院で見た聖母像への感銘、
ニクラウス親方のもとヨハネ(ナルチス)像の制作、
親方の高慢な娘リースベト、親方の敬意ある提案を退け、已む無き欲求、再び旅へ、

「愛の歓楽の急速なたまゆらな陶酔的燃え上がりと、こがれる思いのその短い燃焼と、
あわただしい消滅━それが彼にとっては、いっさいの歓喜と苦悩の象徴になった。」

ペストの惨禍、レーネとの出会い、森小屋の生活、レーネの危難と救出、病と死、
このレーネとの挿話は、感動的かもしれない、

父をペストの元凶として焼き殺されてしまった、哀れで勝ち気なユダヤ娘レベッカ、

魂に刻み込まれた沢山の形象、制作への激しい憧れ、
ニクラウス親方のもとを目指すが、親方は既に亡く、

病身の内気な娘マリーの愛、総督として派遣された伯爵の愛人アグネス、

アグネスとの逢引が伯爵に露見、絞首台の宣告、命運尽きかけた危地に、
懺悔の聴罪師として現れたナルチス、運命の再会、ゴルトムントは特赦され、
二人はマリアブロンの修道院へ、

そこで交わされる二人の哲学問答が、意味深長、面白い所だろうか、

長い遍歴の末に辿り着いた、無常感。
この世の悲惨を経験、快楽・若さを失い、全ては束の間の事象に過ぎない、
無常の克服=芸術の創造・永遠化、

形象の無い純粋抽象・思索の道を究めるナルチス、

「我々には、完全さとか、完全な存在とかいうものは、存在しない。
我々は力から行為へ、可能性から実現へ進む時、真の存在にあずかり、
完全なもの、神々しいものに一段階だけより多く似るのである。
すなわち、自分を実現するのである。」


粗筋なんか書いて、何の意味があるのか、困ったものだ…
処分行きなので、つい、覚え書き、
ヘッセは昔、色々読んだと思うが、全部忘れてしまうんだなあ、

この本が残っていたという事は、感動したからなのかもしれない。
およそ、私の読書とは、そんなものなのだった…

ヘッセで圧倒的感銘を受けたのは、「車輪の下」
いつ頃の事だったか、そのリアリティ故に、こりゃ又、何という傑作か、と思った。
by mgahiru | 2011-01-14 17:55 | 所感
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