昔、読んだのですが、供述調書取調べの細密なディティールに吃驚。 いやあ怖いですね。引き込まれるように、一気に読んでしまう。 本書の瞠目すべき読み所は、 警察の描くストーリーに沿った自白供述に追い込まれてゆく、 密室での取調べの克明な再現と、後の公判で、検察が苦し紛れに捻出した、 異例の障害児童園児の証言・証人喚問であろうか。 冤罪がでっちあげられる構図、拷問に等しい精神的苦痛、心理誘導、偽情報、 自白供述を引き出す為、形振り構わぬ、精神的に追い詰めて行くやり口。 「孤絶した部屋で、一切外界からの情報を絶たれ、 (逆に、警察側が操作した情報のみをそそぎこまれて) 一日に九時間も十時間にも及ぶ追求を受ける時、 人の心が、いかにもろく弱い物であるかを、我々は知らねばならない」 核心的動機・自白供述も充分に取れぬまま、証拠不十分で、 一旦は不起訴処分となるが、 警察リークによるマスコミ報道によって、〈真犯人〉の真っ黒心証に染められており、 同僚らの支援・奔走で、民事での国家賠償請求訴訟を提訴し、 不当逮捕・無実の証明を画す。 アリバイ証言によって危機感を抱いた警察側の反撃、 異例の再逮捕・起訴。アリバイ証言者2名、偽証罪での逮捕。 (民事より刑事裁判優先の為、国賠訴訟は中断される) 不起訴処分となりながら、強引な再逮捕には、よほどの新証拠を掴んだのか。 警察の描くストーリーの決め手として、証人申請されたのが園児証言だった。 警察の執拗な事情聴取が、学園職員の人間関係をズタズタに引き裂き、 混乱・分裂に導く。猜疑心の渦、事件対応への職員間の不一致・亀裂、 未解決事件の拭えぬ不安感。 紛糾から抜け出せぬまま甲山学園は、後に廃園とならざるを得なかった。 冤罪事件では珍しくない、警察の証拠捏造、公権力の犯罪行為。 その証明など実質不可能であり、権力側の越権行為への対抗手段は乏しい。 冤罪を着せられた事によって、奪われた年月・人生。救われない不条理。 11年に渡る受難。「歩まされた人生でも、結局自分が作って行く人生」 警察・検察の癒着関係を含め、司法に限らず、行政機構、国家そのもの、 の無責任体質を、冤罪被害者・山田悦子さんは痛感する。 無責任である限り、冤罪・不当弾圧は無くならない。 清水一行著「捜査一課長」vs「記憶の闇」 どんな推理なのか、ちょっぴり興味。
by mgahiru
| 2010-04-16 17:39
| 所感
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