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作品 No.595  松下竜一「狼煙をみよ 東アジア反日武装戦線“狼”部隊」を読む

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1974、8、30 三菱重工本社ビル爆破事件 及び連続企業爆破事件の
実行犯グループの内面と軌跡を辿るノンフィクション。

“狼”部隊を書くきっかけが、獄中実行犯の「豆腐屋の四季」への感動から、という由。

真正面から取り組む事の重苦しさ故の、たじろぎ、ためらいを作者は隠さず記す。
それは、否応なしに“自己批判”を迫られる事であるから。

わずか数名の実行部隊、兵士読本「腹腹時計」、
侵略加担者としての徹底した自己否定。
左翼運動の衰退して行く中、妥協に肯じない純粋さから、ゲリラ戦術を模索して行く。

三菱重工爆破に於いて、多数の人身被害を出す、
大惨事となってしまった事にショックを受ける。実行犯にとっては、全く予定外の結果。

後の、獄中での早期の自供は、その蟠り、
犠牲者への償い得ない、贖罪の意識も働く。ゲリラ兵士としての、未熟、拙速。

模索は続くが、後続同調者“大地の牙”“さそり”の参加により、
企業爆破テロの広まり。都内非常事態宣言。
相次ぐ人身被害者に、実行犯内での動揺、爆破闘争への疑念。

1975、5、19 一斉逮捕。

獄外救援活動の呼びかけにより、闘争精神の立ち直り、獄内闘争・公判闘争へ。
警察当局が伏せようとする“虹作戦”(天皇暗殺未遂)は、
他の活動家への刺激を顧慮しての由。


イデオロギー対立構造が既に崩壊した現在、隔世の感は止むを得ない。
アジ・プロの如き闘争原理、反日・反帝思想の論理展開に、
付いて行ける者は、いるだろうか。
時代の空気、としか言いようが無いようなものか。

変わらぬ構図、権力対反権力、国家・企業・団体組織対個人。
冤罪とか、薬害、公害、等々。
個人は非力故、連帯・団結、社会運動化に頼らざるを得ない。
それも、薄れつつあるのだろうか。

作者は、小市民的理解を得られる物として企図するが、実行犯から拒否される。
彼が念願とするのは、闘争の継承者に鼓舞を呼び掛ける物であり、
その溝は埋まらないであろう、と断じている。
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by mgahiru | 2009-12-28 21:55 | 所感
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